単なる復刻版ではないリアルスポーツ
メルセデスのみならず、スポーツカー全体にとってアイコニックな存在であるガルウィングの300SL。その復刻版というイメージの強いSLS AMGだが、意外にも最初からガルウィングで企画したものではなかったとメルセデスAMGのSLS開発責任者は言い放った。AMGはもとより、メルセデスとしても久方ぶりの純然たるFRスポーツカーとしてこの企画はスタートしたのだと言う。
その真意はともかく、SLSは期待に違わぬリアルスポーツカーであった。しかも、感覚的にメルセデスを意識させる(乗るとベンツだった、という意味では決してない)ことで、たとえばラグナセカのようなチャレンジングなサーキットにおいても、精神的な余裕をもってそのパフォーマンスを楽しめるという他のスポーツカーブランドにはないメリットを持っている。最小限のメルセデス性×最大限のAMG性。それはもうAMGは独立したいんじゃないか、と思わせるほどの仕上がりだった。
○は、よく動きよく踏ん張るシャシーとフラットかつ俊敏なドライサンプ6.2リッターV8エンジンの組み合わせが、刺激とドライバビリティを上手にバランスしてドライバーに提供されていること。ガルウィングスタイルと相まって、所有欲を大いに掻き立てる。外で聞くV8サウンドも相当に刺激的。レーシングの音はちょっと昔のアメリカンマッスルみたい。
反対に×もあった。それはトランスミッションのフィール。今回、新たにゲトラグと共同開発の7速DCT(ダブルクラッチ)を採用しているが、アップはともかく、ダウンシフトのフィーリングがいまいちパッとしない。変速時間は早いのだろうが、乗り手にそう伝わらずもどかしい。そのあたりの演出力にかけては、赤い馬に見習う点も多い。もっともアチラはメルセデス的な耐久性を全く考慮に入れていない節もあるが。
2500万円前後という価格設定(たぶん)もあって、相当な人気を博すことは間違いない(欲しい人は急いでベンツ販売店へ。今度はSLRマクラーレンのようにベンツ日本直売じゃない)。「売れるだけ造りたい」とAMG 関係者は言っていたが、1マン1モーターの63エンジンやアルミ構造物(マグナ社製)の生産効率を考えると、そうむやみには造れないはず。納車待ちの列は避けようもない。
フランクフルトでもショーカーがお披露目されていたが、彼らのビジョンには数年後のEV化も真剣に見据えられていた。実はSLSの開発責任者は元スマートEVの担当者でもあった。金のかかる先進技術はまず高額車から。面白い展開が期待できそうだ。
(All About)



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